霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第4回

「戻ってくる藁人形」

霊能館公開

うちの神社の裏手は雑木林になっているのですが、先代の宮司だった私の父が健在だった頃に悪さをする人が現れ、困っていました。その悪さというのは、丑の刻参りです。雑木林には神社に代々伝わるご神木がございまして、早朝そのお手入れをしに参りますと、木の幹に藁人形が打ちつけられていることがしばしばありました。藁人形の胴体にはいつも同じ男性の名が墨書きされており、同じ人物が繰り返し呪詛をしていることは明らかでした。先代はご神木の周囲に柵を巡らしたり、看板を立てたりするなどして対策したのですが全く効果がなく、最後には当時まだ禰宜だった私が深夜に見廻りをすることになりました。

丑の刻参りというからには深夜二時前後にやってくるに違いないので、目覚まし時計をセットして午前一時過ぎに起き、懐中電灯の明かりを頼りにご神木の周囲を見回るようになりました。そんなことを初めて半月くらい経った頃でしょうか。いつものように眠い目を擦りながら雑木林へ向かいますと、遠目にぼんやりとした青い光が漂っているのが見えました。明らかに人の気配もしたので、私は相手に気づかれぬように忍び足で近づきました。幹に釘を打ちつける音も響いてきたので、証拠確保とばかりに一気に駆け寄って「こらっ」と大声で恫喝したのです。すると……そこには誰もいませんでした。首を傾げながらご神木を見ると、何といつの間にか五寸釘に串刺された藁人形が打ちつけられていたのです!私はその場で腰が抜けそうになりました。するとさらに追い打ちを掛けるように、暗闇の中で女の薄ら笑いが響き渡りました。これはもういけないと思い、すぐにその場を逃げ出して神社へ戻りました。するといつの間にか起きてきたのか、寝間着姿の父が境内で待っていました。

父が言うには「おまえが化け物に食われる夢を見た。嫌な予感がしたので寝床を抜けだした」と。私は震えながら、今しがたの体験を父に話しました。それから一緒に現場へ戻り、周囲に人がいないことを確認した後、気味の悪い藁人形を回収し、翌朝すぐにお祓いをしてお焚きあげをしました。そのとき父は「ちょっと確かめたいことがある」と言って、藁人形に赤い紐を結びつけ、それからお焚きあげの火に投じたのです。二週間後、また藁人形が打ちつけられているのを見つけました。人形の姿を見るなり私は絶句してしまいました。藁人形の胴体には、父が結びつけた赤い紐が括り付けられていたのです。つまり、私たちは何度も同じ人形を燃やしていたと……。
「これは生きている人間の仕業ではないな。こうなるともう、相手の気が済むまで続けさせてやるしかないだろう」
あきらめ顔で父がそう洩らしてからすでに二十年余りが経ちますが、昔ほど頻繁ではないものの今でも一年に一、二度は必ずご神木にあの藁人形が打ちつけられています……。