霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第5回

「死神アパート」押し入れの天井裏を開けると、そこには大量のお札が……

霊能館公開

五年前の話です。当時、私は紹介制で悩み相談に乗る仕事をしていまして、その顧客の一人に不動産関係の経営者がいたんです。普段は会社の運営や投資物件の良し悪しなどについての相談を受けていたのですが、ある日、いきなり「お祓いをして欲しい物件がある」と言われまして、その社長さんの車で都内の城東方面に向かいました。
「お祓いをお願いしたいのは一昨年からうちの会社で管理しているアパートなんですが、そこで不審死が続いてまして……。」
社長さんの話を要約すると、問題のアパートは築20年の木造二階建て。地下鉄の最寄り駅から徒歩数分で家賃も手頃だったこともあり、全室が埋まっていた。しかし昨年、一階の部屋で一人暮らしをしていた学生が死体で発見されたのを皮切りに、わずか一年足らずのうちに四人の人が亡くなってしまった。その全員が突然死だったとのこと。
「死因は皆、心臓発作だっていうんですが、わずか十世帯の中でそんな偶然が続くのかと思いまして。しかも死んだ人たちは、二十代から三十代前半の健康な若者ばかりなんですよ。それでいつの間にか近所で死神アパートなんて口さがない噂を立てられて、残りの住人も気味悪がってほとんど退去しちゃいました……。」

現場のアパートに到着すると、私はさっそく建物全体を霊視しました。すぐに気づいたのは、建物を中心にした一帯の霊気が凄まじく淀んでいること。そして浮遊霊の数が異様に多いことでした。しかも周囲をさまよっている霊体は皆、吸い込まれるようにアパートの中へ入っていくのです。これはただ事ではないと思いました。さらに亡くなった学生さんが住んでいた部屋に案内され、絶句しました。室内には無数の浮遊霊やら地縛霊やらがひしめき合い、一斉にこちらを睨んでいたのです。

私はまとわりつく霊を祓いながら押し入れを開けました。中は空でしたが、何かが隠されていることは間違いないと感じたので、試しに天井板を押し上げてみたところ案の定、上の空間から大量のお札が落ちてきたのです。神社やお寺で授けてもらう木製や紙の守り札がざっと数百枚はありました。どれも古びており、しかも血しぶきにまみれていました。恐らく神社やお寺で焚き上げるために積まれていたものを盗み、それに人か動物の血をかけたのでしょう。そこの部屋には死んだ学生が入居する前、マイナーな新興宗教を信心する中年女性が住んでおり、アパートの住人にうるさく布教するのでトラブルになっていたそうです。恐らくはその女が何らかの呪詛をしていたものと推測しました。お札の回収後、お祓いの儀式を執り行ったのですが、すでにアパート全体が魑魅魍魎の巣窟と化していたので、さしたる効果を出すことはできませんでした。おまけに大量の古札の穢れに当てられて、それから私は一週間近く寝込んでしまいました。世の中には恐ろしいことをする人間がいるものです。今でも思い出すたびにゾッとします。