霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第17回

「刺す男」資産家から一人娘の縁談について相談を受け、さっそく霊視をしてみると……。

霊能館公開

私の実家は真言宗の寺でして、一時その跡継ぎになるべく僧侶の修行をしていた最中、突如として見えない物が見える体質になりました。僧侶の資格は得たものの、諸処の事情により寺はすぐ下の弟に任せて俗世で働くことになったのですが、修行中に身についた霊能力はその後も消えることはありませんでした。そんな私の元にある日、Aさんという方から電話がありました。この方は都内近郊の土地に複数のビルやマンションを所有している代々の資産家なのですが、アラフォーになる一人娘がなかなか嫁いでくれないのが悩みの種で、仕事で面談した時には必ずその愚痴を聞かされていました。そんなAさんが電話口でいきなり、
「娘の縁談が決まりそうなんだが……。」
と言ってきたのです。
「おめでとうございます。良かったですね。」
「いや、それがね、肝腎の相手の男がちょっと引っ掛かるんだよ。良かったら見てくれないかな。」
相手のどんなところが引っ掛かるのかと聞くと曖昧に口ごもり、具体的なことを言ってくれないのが非常に気に掛かりました。しかし相手は大切な顧客。それで渋々ながら引き受けたわけです。

男性の名前と年齢を聞き、いったん電話を切って瞑想に入りました。そのまま霊視に突入して間もなく、脳裏に不吉な映像が流れ込んできました。男性当人と思われる三十代の人物が、鋭利な刃物で誰かの胸元をザクザクと刺している光景でした。やがて幻像のピントがさらに絞られ、殺されている人の顔が見えてきました。それは他ならぬAさん自身でした……。この霊視結果をどう伝えたものかしばらく迷いましたが、結局はありのままを伝えることにしました。すると電話の向こうでAさんは怒りも驚きもせず、ただ深々と溜息を吐いて、
「やっぱりなぁ……。」
と言うのです。どういうことですか?と聞き返すと、
「じつは俺もね、毎晩のようにそれと同じ夢を見ているんだよ。娘の婿さんに殺される夢。これって何か悪い因縁でも絡んでいるんだろうか。娘には悪いけど破談にした方が良いんだろうなあ。」
もちろん私もそうすることを勧めました。

それからわずか2週間後、Aさんが急逝したという知らせが事務所に飛び込んできました。死因は心筋梗塞。霊視で見た光景が脳裏に甦り、慄然としました。Aさんの事業は残された奥さんが継ぐことになり、その際にコンサルティングの契約を一方的に打ち切られてしまったのでその後A家がどうなったのかはよく知りません。ただ、喪が明けてすぐ娘さんが例の男性と結婚したことだけは風の便りで伝わってきました。さらに婿養子となったその男性がおかしな宗教団体のようなものを始め、A家の財産を食いつぶしていることも……。後日、実家の寺を継いだ弟にこのことを話したら、
「そりゃたぶん、ダキニ天か犬神の外法を使ったんだな。一番、凄まじいやつ。下手に詮索したら兄貴も命を落とすことになるから、そっとしておいた方が良い。」
と釘を刺されました……。