霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第20回

「アリサちゃん、これあげる」急死した友人の母親の霊は、いったい何を伝えようとしたのか?

霊能館公開

私、霊の姿というのは全く見えないのですが、代わりに変な声や音を聞いてしまうことがあります。つい最近もそれが起きました。高校時代の友達でユキコという子のお母さんが急病で亡くなり、そのお通夜に伺った時のことです。当日は同級生だった女の子何人かで待ち合わせ、みんなで連れ立って葬儀会場へ向かったのですが、夕刻の舗道を歩いている途中にすぐ耳許で囁き声がしました。
「アリサちゃん……」
いきなり自分の名前を呼ばれ、慌てて周囲を見回しました。でも、その場にいた誰も私を呼んでないことが分かり、ああ例のやつかとようやく気付いたのです。そう言えば今の声、ユキコのお母さんにそっくりだったな。私に何か言いたいことがあるのかな。そんなことをぼんやり考えながらお焼香を済ませ、泣き腫らしているユキコを慰めていたのですが、その最中に再びあの囁き声が聞こえてきたんです。
「アリサちゃん、これあげるわ……」
それは明らかに棺の方から聞こえてきました。やっぱり、声の主はユキコのママだったのね。それにしても私にあげたい物って一体何だろう?

葬儀会場を後にした私たちは、そのまま最寄りのJR駅前へ向かいました。せっかく久しぶりに再会したんだから、お清めを兼ねて食事をしようと。それで適当に見つけたお店で軽くお酒を飲んでいたら、ユキコと仲の良かったサキが酔いに任せて話し始めたのです。
「ここだけの話だけどさ、ユキコのママってじつはちょっとヤバかったんだよ」
「え、どんな風に?普通の優しいお母さんに見えたけど」
「まあ、表向きはそうなんだけど、私は実際に現場を見ちゃってるからさぁ」
「ええっ、何を見たのよ?」
サキはうつむいて口ごもりながら、高校時代にユキコのお母さんが自分の家のベランダで鳩を叩き殺している現場を見たことがあるのだと告白しました。
「鳩のフンで洗濯物を汚されたらしいんだよね。それで頭に来て、ベランダに餌まいて鳩が降りてきたところを木の棒みたいなのでバンバンッって」

みんなと別れてからの帰り道は身がすくむ思いでした。サキの話がもし本当だとしたら私、生きた鳩を殺すような女の人に名指しで話しかけられたことになります。しかもその人はもう死んでいる。そんなことを考えているうちに突然、また声が聞こえてきたんです。
「アリサちゃん、これあげるわ。受け取って」
次の瞬間、頭を物凄い衝撃が走り、気が付いたら病院のベッドで寝てました。道沿いのマンションの五階から、ベランダの手摺りに掛けられた小さなプランターが落ちてきたそうです。それが私を直撃したと。おかげで頭部を数針縫う怪我を負いました。

じつを言うと私の恋人、ユキコの元彼なんです。別に略奪とかしたわけじゃなくて、二人が別れた後に大分経ってから付き合い始めたんですが、それでも彼女のお母さんは気に食わないってことらしいです。どこかにお祓いのパワーが強い霊能者とか、いないでしょうか。