霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第21回

「トイレの恵理子さん」OLにそっと耳打ちされた、女子トイレに出る霊の伝説。その真偽を確かめてみると……。

霊能館公開

私は四柱推命や九星気学などを用いて、企業や個人事業種向けの人事コンサルティングなどを手掛けているのですが以前、伺った会社で怪異と出会ってしまいました。その時のお話をさせていただきます。

依頼の窓口となっていたのは人事部長さんでした。当時はまだ個人情報の取り扱いなどについても今ほどうるさくなかったこともあり、社員全員の生年月日を教えていただいた上でその適性を割り出し、レポートを作成した後に人事部へ伺いました。

結果の報告方々、部長さんと懇談していたのですが、そのうちに先方に急用が生じ、部署内の応接室で15分ほど待つこととなりました。その時、一人のOLさんがお茶を取り替えに来てくれたのですが、彼女が私に耳打ちして言うには、「多岐川先生、じつはうちの社屋の5階の女子トイレに幽霊が出るんです」

占術家という職業を、祈祷師や霊能者の類と混同しているのだと思いました。ただ実を言えば私には多少の霊感があり、それを占術にも活かしています。それで、その話にも興味を惹かれました。そこに幽霊が出ることは女子社員の大半が知っており、彼女たちはそれを「トイレの恵理子さん」と呼んでいるとも聞きました。なぜ恵理子さんなのかと問うと、10年ほど前に勤めていた恵理子という名の女子社員が直属の上司との不倫関係に悩み、5階のトイレで自殺したのだと。その時、席を立っていた部長さんが戻り、ひそひそ話は中断となりました。

それから用件を終えた私はその部署を辞してエレベーターに乗りかけたのですが、そういえばすぐ階上は5階であると気づき、好奇心に促されるまま階段を上がりました。問題の女子トイレは個室3室のスペースで明るく清潔な雰囲気に溢れていました。こんな場所に幽霊が出るものかと首をかしげつつ、ついでだからと化粧直しをしていたのですが、そのうちに先ほどのOLさんがひょっこりと現れました。

「先生、何か見えましたか?」「いえ、私は霊能者ではありませんので」「うーん、残念~」言いながら彼女は一番奥の個室へ消えたのですが、その後も途切れることなく私に話し続けてきたのです。「じつはここ、今まで3回も内装を直しているんですよ。定期的にお祓いもしてるし」ずいぶんはしたない子だなと顔をしかめつつも、ドア越しの会話は続きました。

「はっきり言ってウチの会社はヤバイです」「えっ、どういうことですか」「お金や男女がらみの不祥事が多いんです。それを全部、上が揉み消して。そのくせ社長は信心ぶって神棚作って社員に拝ませたり、先生みたいな占い師を呼んでみたり~」話の雲行きが怪しくなってきたので、退散しようと思って振り向いた瞬間、不覚にも私は気絶してしまいました。鏡の死角で見えなかったのですが、件のOLは天井近くまである仕切りの上から首を突き出して私と話していたのです。血みどろの顔でニタニタ笑っていました。つまり、彼女が恵理子さんだったわけです。