霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第22回

「踊るおじさん」町内会主催の盆踊りの晩、踊りの輪から離れて奇妙な動きを繰り返す謎の中年男が……。

霊能館公開

学生時代、お盆で帰省した時に起きたことをお話しします。実家に帰った次の日の夜、毎年恒例になっている町内の盆踊り大会がありまして、高校の頃の友人たちと連れ立って遊びに出掛けました。

その年の会場は私が卒業した小学校のグラウンドでした。中央に立派な櫓が組まれ、その上では近所に住む知り合いのお兄さんが威勢良く大太鼓を叩いていました。周囲で踊る人たちの中には古くからの顔見知りもちらほらいて、「お、愛ちゃん、帰ってたの?一緒に踊ろうよ」などと笑顔で声を掛けてくれました。

誘われたので仕方なく踊りの輪に入り、しばらくはぎこちなく手足を動かしていたのですが、そのうちに何となく気恥ずかしくなってしまい、バラバラになった友人たちと再合流して夜店を回りました。
「そういえばさ、愛菜って昔から霊とかよく見てたよね。今夜もなんか見える?」
女友達の1人にいきなり話を振られ、思わず言葉に詰まりました。生まれつき霊感が強いことは自分でも百も承知なのですが、その能力のせいで中学の同級生からいじめられていた時期があり、ちょっとしたトラウマになっていたからです。

その子の無神経さが嫌になった私は、トイレへ行くと告げて場を離れました。そのまま帰ってしまおうかとも思ったのですが、それではあまりに大人気ないと考え直しました。それで人数分のジュースを買って戻ろうとしたその時、奇妙な光景が目に留まったのです。

町内会の役員などが常駐するテントのすぐ背後に、なぜか1人で踊っている人影がありました。白いシャツに短パン姿の中年男性でした。その踊り方がまたとても独特で、足はほとんど突っ立ったまま。水かきをするような仕草で手だけを盛んに動かしていたのです。そのオジサンは町内会長のすぐ真後ろにいたのですが、テント内の人々は誰も気が付かない様子でした。
(これは、もしかして……)
そう思った瞬間、オジサンが急にこちらへ顔を向けて笑い掛けてきました。それまで左の横顔しか見えなかったのですが、闇に隠れていた右半分はグジャグジャに潰れて眼球が飛び出していました。私はすぐにその場から逃げ帰りました。

家に戻ると、私と同じく霊感がある祖母に見たばかりの出来事を伝えました。
「その男、どんな風に手を動かしてた?」
「両手の甲をくっつけたり離したりを何度も繰り返してたよ。こんな風に~」
と霊の身振りを真似て見せると、祖母は
「そりゃ、逆拍手(さかさはくしゅ)だわ。亡者が人をあの世に引き摺り込む時の仕草だよ」
と言って顔をしかめました。

町内会長が交通事故で急死した、という報せが飛び込んできたのはそれから2日後のことです。乗っていたバイクが転倒し、路肩に頭を打ちつけて亡くなったそうです。たまたま現場を見た父は「路面に削られて顔半分が潰れていた」と言っていました。亡くなった町内会長とあの不気味な霊の間に、生前どんな因縁があったのかはいまだに全く分かりません。