霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第2回

「開かずのトイレ」いつも故障中で使えない女子トイレの個室。ある晩、そこから女のすすり泣く声が!

霊能館公開

じつは今、凄く困っていることがあるんです。話の発端は今年の夏のことなんですが……お盆休みの前に完成させておかないとならない書類があって、二人の同僚と一緒に残業していたときのことです。11時を過ぎた頃に同期のA子が「トイレ行きたい」って言い出しました。「一緒に行って」ってお願いされたので、気軽に「いいよ」って。何だか子供みたいですが、うちの会社のトイレってちょっと気持ちが悪くて、残業の時には女子社員が連れ立って行くのが習慣みたいになっていまして。フロアの女子トイレには、いつも故障中の張り紙が貼ってある個室があるんです。じつは夜になるとそこから女の泣き声が聞こえてくるって怪談話が以前からあって……もっとも私はそんな声は一度も聞いたことがなかったんで信じてませんでした。何より本当に幽霊が出るなら、誰よりも先に霊感のある私が気づくはずですから。

長い廊下の突き当たりにあるトイレへ着くと、A子は入り口側の個室に入りました。私も用を足そうと思ったのですが、空いているのはいわくつきの個室の隣だけだったので入る気になれませんでした。で、彼女が入ってからほんの30秒くらい経った時、突然、「ヒッ。ヒッ。ヒッ……」と女が嗚咽しているみたいな声が聞こえてきたんです!これが噂になっている幽霊の泣き声か!でも、何故かその声はA子が入っている個室から響いてました。外からノックして「大丈夫?」って叫んだら、すぐに内側の鍵がガチャンって開いて……。でも、A子は出てこない……。「開けるよ」って声を掛けてから、恐る恐る扉を開きました。当然、中にはA子がいました。蓋が閉じたままの便座に腰掛けて、髪を前に垂らして深くうつむいてました。「どうしたの!?」と肩を軽く揺らしたら、気がついたのかゆっくりと顔を上げて、「便座を上げようとしたら、急に後ろから頭を撫でられたの!」って。

私、そのときに見ちゃったんです……。血の気が失せて筋張った女の手が、A子の背中の髪の先をしっかり握っているのを……。手の先にある腕を目線でたどると、何とあの張り紙がしてある個室から伸びていました。まるでホースみたいに何メートルも……。私が息を飲んでいると、女の手が急にA子から離れ、腕がするすると奥の個室へ戻っていきました。結局、私が見たものについてはA子には言いませんでした。怖がらせたら悪いし、変人扱いもされたくないですから。で、今、私が困っていることなんですが、最近、あの長い手がオフィスにまで現れるようになっちゃって……。仕事中にふとPCから目を上げると、前の席の同僚の首筋を掴んでいたり、私のデスクの下でトグロを巻いていたり……そんなことが夜、昼構わずしょっちゅうです。どうも向こうは、霊の姿が見える私の気を惹こうとしているようです。このご時世に転職なんかできませんから、どうしたら良いのか真剣に悩んでいます。