霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第6回

「泣き続ける女」その女性客は、ただ泣きじゃくるばかりで何も言わず……

霊能館公開

副業で電話占いの仕事をやっています。勤め先の会社を定時に引けて家に帰るのが午後七時前後。それから零時過ぎまで、霊感占い師としてお客様の相談に乗るんです。電話は占い会社から自動転送されます。一人のお客様に割く時間は二十分から三十分くらいで、毎日平均八件前後をこなしています。ほとんどのお客様は女性で、恋愛か人間関係の悩みが多いです。で……問題の夜もいつものようにノルマをこなしていたのですが、最後のお客様が変な感じで……。その女性、電話がつながってからずっと泣いているばかりで、一言もしゃべろうとしないんです。こちらから水を向けてもほとんど反応がなくて、よほどショッキングなことがあったのかなと思いました。仕方なく電話越しに相手のことを霊視してみました。しかし、何も見えませんでした。バリアみたいなものにこちらの霊能力が遮られる感じでした。ただ暗澹とした悲しみの波動だけはひしひしと伝わってきました。

さすがにこのまま料金だけいただくのは気の毒になりまして、
「そろそろ基本のお時間が過ぎます。あの、もう少し落ち着いてからあらためてお電話された方がよろしいと思うのですが……。」
と申し上げたんです。 そうしたら、ようやく相手が反応しました。今にも消え入りそうなか細い声でした。
「いえ、いいんです。このまま続けてください」
しゃくり上げながらそう言うので、
「どのようなお悩みですか」
と伺いました。
「別れた彼のことがどうしても忘れられなくて……。」
「分かりました。その男性とはどれくらいお付き合いされたのですか」
「三年くらい……です」
「別れたのはいつ頃ですか」
「昨日……」
そこで相手はまたすすり泣きを始め、そのうちにいきなり通話が切れました。

それから一瞬、間をおいて再び泣き声が聞こえてきました……。もちろん電話口から聞こえているのではありません。私のいる部屋から響いていたのです!恐る恐るベランダの方へ視線を移すと、レースのカーテンとサッシの向こう側に人影がぼんやりと浮かんでいました。長い髪を振り乱した若い女。その額からは真っ赤な鮮血がドロドロと流れ落ちていました。私は慌てて印を結び、経文を唱えました。しかし、女の姿は消えませんでした。
(イキカエリタイ……ワタシヲ、イキカエラセロッ)
頭の中に怒声が響き渡り、同時にすぐ目の前に血塗れの顔がありました。そこで意識がブツンと切れて、気がつくと朝になっていたのです……。その日の昼過ぎ、念のため占い会社のスタッフに確認を取りました。女との通話記録はきちんと残っており、鑑定料金もクレジットカードで決済されていることが分かりました。摩訶不思議な話です……。おそらく、あの女は失恋して自ら命を断ったのでしょう。まさか自殺霊から電話相談を受けるとは思ってもいませんでした。