私の心霊体験談~S高校の日々~

私自身が通っていたS高校での出来事を、全5回に渡ってご紹介いたします。地域や名称はもちろん特定できない範囲での記述としておきます。ただし、知っている人からすれば「あぁ、あそこの高校だな」とすぐに気付くことでしょう。

第2回

亡くなった顧問のシート

霊能館公開

私が通っていたS高校は、スポーツに特に力を入れていた高校です。その高校に存在するすべての運動部が、県大会で優勝・準優勝は当たり前、全国大会で上位に入賞するのも珍しい話ではないといった環境でした。私自身、室内競技のとある運動部に所属しており、学校がある日は朝の練習から放課後の練習を夜遅くまで、土日も朝早くからトレーニングやハードな練習に打ち込む毎日でした。今回は、毎年の夏休みや冬休みに、学校へ3日間ほど泊まって行う合宿期間中に起こった心霊体験をお話ししましょう。

その日、夜の7時頃に練習を終えた私たちは、食事後の自由時間をのんびりと過ごしていました。練習に疲れてすぐに布団に入って熟睡している先輩もいれば、仲良しのグループで恋愛話に花を咲かせている後輩もいて、さらにはゆっくりとお風呂に入りに行った同期もいたりで、思い思いの過ごし方でリラックスしているようでした。私はその日、いまいち練習の内容に納得できていなくて、仲の良かった同級生のKに「もうちょっと練習したいんだけど、相手してくれない?」と頼み、Kも同じように思っていたようで快く引き受けてくれて、食事を終えて1時間後くらいだったかな?、夜9時頃から練習場に行ってウォーミングアップをして練習をスタートしました。

最初のうちは、Kと世間話をしたり、和気あいあいとした雰囲気で練習をしていたのですが、始まって30分くらいから急に空気が変わった気がしました。その練習場には、全体を見渡せるような位置に大きな茶色のソファーというか座椅子みたいなシートがあって、いつも顧問の先生がそこに座って私達の練習を厳しく見ているのです。空気が変わったのは、まるでそこから顧問の先生が座っているかのような緊張感が走ったからです。私達は一切話をしなくなり、練習場にはボールの音しか聞こえないほど静まり返っていたのを今でも鮮明に覚えています。なにしろ、緊張感が伝わってくるシートの方を、なんだか見てはいけないような気持ちに捕らわれていたのです。

時間が経つにつれてその緊張感は強くなり、妙に圧力と言えるくらい苦しさを感じるようになりました。私は本能的に「この世のものではない“何か”がいる!」と感じて、怖くて手や足が震えてしまい……。見てはいけないと思ったけれど、どうしても気になってしまってうっすらと横目でシートの方を見てしまったのです。なんとそこには、人間の形をした“何か”が座っていたのです。私達が練習している間、「その人」は腕と足を組んで練習している様子をずっと見ていたのです。さすがに恐怖を感じ、すぐにでも練習を中断したかったけれど、自分からKを練習に誘っているのにここで止めようなんて言えない、という変なプライドが邪魔をしてしまい、結局2時間ほど苦しみながら練習を続けたのです。

練習が終わって私は、そのシートの方に向かってなぜか一礼してから、みんながいるミーティングルームに足早に向かいました。途中、隣を歩いていたKを見ると、顔が真っ白! どうやらKも私と同じ「人らしきもの」を見たようでした。「ねえ、さっき“いた”……よね」「うん……。やっぱり見えてた?あれ絶対だよ」「うちらの練習しているところ、真剣な眼差しで見てたよね」「そうそう、なんかI先生(顧問)に見られてる感じだった」というやり取りをしました。ミーティングルームに帰ってそのことを仲間に伝えても、一切信用してくれませんでした。「どうせ2人でうちらを騙そうとしてるんでしょ?」「そんなのいるわけないじゃん?」と。

でもこれだけはっきり見えていたのに、と思ってモヤモヤしていたので、Kと2人で顧問のI先生に私達が経験したことをありのまま話しました。そうしたら、I先生からこんな言葉が返ってきたのです。「お前らが見たのは、たぶんH先生だ。うちの部活が昔、全国大会で何度も優勝したことは知ってるよな?その時代に顧問をしていたのがH先生だ。ものすごい熱血教師で有名だったんだぞ。持病が悪化してしまって、退職した数年後には亡くなったそうだが……」さらにI先生の言葉は続きます。「2人が夜遅くまで練習している姿を見て、H先生は応援したかったんだろうな。まだまだ自分の夢を追いかけたかったのかもしれんな」と。Kと私は顔を見合わせて、納得の表情を浮かべました。確かにあの威圧感は凄まじいものでした。でも思い返してみると、嫌な空気は感じなかったので、I先生が言っているのは間違いないのだろうと確信しました。この出来事があって以降は、1度もH先生らしき姿を見る事はなかったけれども、きっと練習場には今でも頻繁に訪れて、私達や後輩の姿を見守ってくれているんだと思います。