霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第13回

「腕が痛いんです」整体院を初めて訪れた中年男性。彼を施術室のベッドに案内すると……。

霊能館公開

2年前に整体と鍼灸の専門学校を卒業し、現在は親戚が経営する整体院で助手兼受付として働いています。この道を目指そうと思ったのは、整体師をしている叔父、つまり今の院長から、
「おまえには人を癒やす特殊な能力がある。いわゆるヒーリングパワーってやつだ。それは天から授かったものだから大事にしないといけない。」
と言われたのがきっかけでした。叔父は霊感が強い人で、私にも同じ能力があると言っています。自覚はないのですが……。実際24歳になる今まで、幽霊の類は全く見たことがありませんでした。しかしつい最近、ようやくそれに遭遇する機会を得ました。それもかなり凄まじいものに……。

叔父の整体院は完全予約制で、新規のお客さんも電話予約をいただいてから指定の日時に来ていただく決まりになっているのですが、ある日の午後、飛び込み客が訪れました。眼鏡を掛けた背広姿のおじさんで、左腕を痛そうにかばいながら、
「どうか診てもらえませんか、お願いします。」
と必死の形相で訴えてきました。
「どうされたのですか。」
と聞くとおじさんは、
「道を歩いていたら、急に腕が痛くて痛くてたまらなくなって、そんなときにふとここの看板が目に入ったものですから。」
と言いながら、勝手に待合室のベンチに座り込んでしまいました。私は施術中の院長の所へ行き、判断を仰ぎました。ちょうど予約に空きのある時間帯だったので、良いだろうということになり、そのおじさんを予備の施術スペースに案内しました。

おじさんに症状に関する記入用紙とペンを渡すと、いったんスペースを出て受付カウンターに戻ったのですが、すぐに大声で呼び出されました。
「お願いです、来てください!腕がぁ!」
何事かと思い、ベッドスペースのカーテンを開いた途端、卒倒しそうになりました。さっきまで普通の姿だったおじさんが血塗れになっていたのです!しかも本人が痛いと言っていた、その右腕は肩先から落ちて床に転がっていました!私は絶叫しながら院長のいる施術室に駆け込みました。
「何してるんだ、おまえは!」
と怒鳴られましたが、こちらはそれどころではありません。怒る院長の袖を無理矢理に引っ張って、予備スペースへ連れて行きました。しかし、そこにはすでにおじさんの姿はなく、白紙の用紙とペンがベッドの上に置いてあるだけでした。その時、急にけたたましいサイレンの音が響いてきました。外へ出てみると、すぐ近所の交差点で歩行者とトラックの衝突事故が起きたことが分かりました。歩行者はトラックの車輪に巻き込まれてひどい有様になっていると……。頭が混乱したまま立ち尽くす私の肩を叩き、叔父がぽつりとつぶやきました。
「そのおじさん、轢かれた瞬間、よっぽど痛かったんだな。それでここへ来たんだな。」
私は無言で頷き、その場で手を合わせておじさんの冥福を祈りました。