「ハロウィンパーティ」仲の良い友人同士で集まって開かれたハロウィンの集い。しかしそこには招かれざる客が……。
他人に話しちゃいけないのかもしれません。でも、逆に誰かに話せば厄払いがいできるんじゃないかと思って、ホントご迷惑だと思いますが聞いてください。
それを見たのは今年の10月31日の深夜。そう、ハロウィンの日です。当日は渋谷がすごい騒ぎになっていましたよね。本当はあそこに行きたかったんですが、私が住んでいるのは関東のかなり奥の方で、交通費や何やら結構かかるし、それなら地元でパーティをやろうということになって、高校時代の同級生を中心に40人くらいのメンツが集まりました。会場は駅の近くの小さなクラブを貸し切りにしたんです。コミケ常連のレイヤーなんかも混じっていたので、かなり凝った仮装大会になりました。
でもハロウィンっていっても、まあつまるところはみんなで集まってワイワイと騒ぎたかっただけで、パーティも中盤となる頃には、ミニ同窓会を兼ねたただのダンスパーティになっちゃってました。それでも十分楽しくてつい飲み過ぎちゃって、途中で急に気分が悪くなってトイレに駆け込んだんです。そうしたら、そのトイレの中にそれがいたんですよ。
洗面台脇の狭いスペースに、ひょろっとした体型の真っ黒い影がぼんやり立っていました。顔には白いお面みたいなのを付けて、吸血鬼のマントみたいなのをまとって、ちょっと見はハロウィンの仮装そのもの。でも私、昔からそういうのが分かるタチなので、すぐに人じゃないと気づきました。ホント怖かったんですが、叫んで騒ぐっていうのもアレだったんで……。だって私にしか見えてないとしたら、変人扱いされるじゃないですか。それでそのまま、そこから出たんです。
でも気分が悪いのはどうにもならないから、わざわざ外へ出て、コンビニのトイレを借りました。で、しばらくして落ち着いて、また元の店へ戻ったら、トイレにいたはずのそれがいつの間にか会場に移動していたんです。
正直、ヤバイと思いました。だってそいつの全身から真っ黒いオーラみたいなのが噴き出してたし。前に有名な心霊スポットで同じようなのを見たことがあるんで。
そいつが何をしようとしてるのかを観察しました。そうしたら、フロアで踊っていたリカっていう子の真後ろに近づいて、すぐ後ろで立ち尽くしていたかと思うと、着ていたマントを翼みたいに広げて彼女の全身をすっぽり包み込んだんです。
悪寒が走って肩をすくめたら、すぐ横からかすれた声が聞こえてきました。
「リカには言うなよ」
振り返ったら、入り口のテーブルに置かれていたカボチャのランタンがいつの間にか、血みどろの女の生首に変わっていて、ぎょろりとした目玉に睨みつけられました。すぐに卒倒しちゃったんで記憶はそこまでです。
翌月、リカは自宅で首吊り自殺しました。遺書がなくて動機は不明なんですが、生前カノジョ持ちの男にちょっかいを出してたみたいで、相手の女からすごく恨まれていたという噂を聞きました。
話はこれで終わりです。