霊感恐怖夜話
~霊能者が体験したコワい話~

霊能者が体験した、悪霊、怨霊、因縁などにまつわる恐怖の実話をお届けいたします。

第26回

「開かずの踏切」最寄りの私鉄駅近くにある開かずの踏切。そこでは今まで飛び込み自殺や事故が絶えず、浮かばれぬ霊が出没するという噂が流れていた。

霊能館公開

独身時代の一時期、プロのタロット占い師として活動していたことがあります。子供の頃からの占い好きが昂じて、いつの間にか副業みたいな感じになっていたんです。本業の会社勤めが休みの土日限定で、デパートやショッピングセンターのブースなどに派遣されて一見のお客さんを占っていました。

でも、あまり長くは続きませんでしたね。見ず知らずの人の悩みを聞いているうちにその業を背負っちゃったらしくて、突然、原因不明の大病をして辞めることになったんです。私、じつは子供の頃からかなりの霊感体質なんです。幸い病気は治りましたが、占いは趣味に留めておけば良かったといまだに深く後悔しています。

健康を取り戻しても霊感体質はそのままで、今でも時々、霊を見るのですが、この前遭遇したヤツはかなり壮絶でした。

昨年の春、都心のアパートから区外の広めのマンションへ引っ越したのですが、その最寄りの私鉄駅の近くにいわゆる開かずの踏切がありまして、朝夕のラッシュ時などはほとんど閉まったままなんです。しかもただ開かないだけじゃなく、無理に遮断機を潜って電車に轢かれちゃった事故や飛び込み自殺の類なんかも過去に何件かあったようで、地元では昔から呪いの踏切としても有名だと聞きました。

で、その日は、久しぶりに大学時代の友人と会う約束をしていまして朝、旦那を送り出してから私も身支度を調えて駅へ向かいました。もう9時を回っていたので例の踏切はちゃんと開いていたのですが、そこを通り過ぎている間、物凄く嫌な感じがしたんです。それで思わず振り返ったら、踏切の隅っこに真新しい献花が置かれていて、その前でしゃがんで手を合わせている小柄な人影が目に入りました。70代くらいの和服のお婆さんでした。
(ああ、また自殺か事故があったんだ……)
自分が感じた悪寒はそのせいかと思いました。でも、昨夜のニュースや新聞の報道ではここで何か起きたなんて言っていなかったな、などとぼんやり考えながら再び歩き出そうとした時、今度は「危ない!」という叫び声が聞こえてきたんです。

遮断機が降りた踏切の内側から、無理矢理に引っ張り出される若い女性の姿が見えました。その直後に急行が通り過ぎて、まさに間一髪という状況でした。その女性を助けた中年のサラリーマンらしき男性が、「あんた、死ぬぞ!」と血相変えて怒鳴っていました。すぐに駅員と警官が駆け寄ってきてちょっとした騒ぎになったのですが、私はある一点に目が釘付けになったままでした。

先ほどの和服のお婆さんが、女の子の足首をがっちりと掴んでいたんです。いえ正確にはお婆さんの上半身で、お腹から下はバッサリちぎれていました。とても悔しそうな表情でしたよ。踏切の中へ引き摺り込みたかったんですね。

目の血走ったお婆さんの顔が私の方へ向きそうになったので、慌ててその場を逃げました。以来、その踏切がある道は避け、凄く遠回りして駅へ行っています。