私の心霊体験談~S高校の日々~

私自身が通っていたS高校での出来事を、全5回に渡ってご紹介いたします。地域や名称はもちろん特定できない範囲での記述としておきます。ただし、知っている人からすれば「あぁ、あそこの高校だな」とすぐに気付くことでしょう。

第1回

病院跡地に建てられた学生寮

霊能館公開

私の通っていたS高校は、スポーツ特待生を広く受け入れている学校で、県外から志望して入学してくる学生も多い高校でした。私を含め県外から入学してきた学生は当然通うことができないため、特待生が生活を送る寮も学校には完備されていました。その寮は、何10年も前から建っている古い建物。お世辞にも綺麗とか清潔とか言えない、「田舎にあるボロアパート」という言葉がぴったり当てはまるような寮でした。たしか寮の部屋数は全部で40くらい、各部屋に2人ずつ入室して生活を送っていました。1階には3年生が、2階には1、2年生が入室するようになっていました。ただし、2階には1室、誰も入居していない部屋がありました。先輩の話によると、「あの部屋だけは怪奇現象とか心霊現象が多すぎて、寮母さんが開かずの部屋にしたんだよ」とのことでした。実はその部屋だけでなく、この寮自体が「いわくつき物件」で、寮生活を送ってきた中で私自身も数々の心霊体験を目の当たりにしてきました。

そもそも、昔この場所には、入院施設のある小さな病院があったそうです。残念ながら病院は廃業してしまい建物も壊されて、その跡地にこの寮が建てられたそうです。また、寮の横には大きな桜の木があるのですが、特待生という期待されて入学したにもかかわらず成績が伸び悩み、厳しい部活練習や熱血顧問に付いていくことができず、その桜の木にロープを結んで首を吊り自殺した学生もいたという噂もありました。その桜の木は春になっても奇妙なことに満開の花を咲かせることがなく、また何度も撤去作業が試みられたそうです。ですがお祓いをした後で作業を開始しても、なぜか重機が動かなくなったり、作業員が怪我をしたりと、いつも不吉なことが起こるため、今でもその木は撤去されないまま残っています。

そんないわくつきの学生寮ですが、各部屋でも様々な心霊現象が起こっていました。今回は、たくさんの現象の中でも特に怖かったお話をしましょう。

私が同室だったのは、Mという生徒でした。長期休暇中のある日、Mは地元に帰省中で部屋には私だけでした。寂しいから隣の部屋に遊びに行っておしゃべりをしたり、テレビを見たりして楽しんでいました。この寮、22時には就寝となり、その5分前に音楽が合図代わりにかけられるんです。その日もいつものように音楽が流れてきたので「じゃあ、そろそろ部屋に帰るね」と言って、私は自分の部屋へと戻りました。外は真っ暗、私の部屋の電気も消していたし、みんなも見回りの寮母さんに怒られないようにと早々に消灯していたこともあって、自室までの距離がものすごく暗い感じでした。

部屋の電気のスイッチは、部屋の奥側に配置されているので、いつも出掛けるときは電気から垂れている紐を引っ張ってつけたり消したりしています。部屋に帰ってから、いつものように右手で電気の紐を引っ張って点けようとしたその瞬間、何かが私の右腕をギュッと引っ張ったのです。「何!?」と思って、慌てて引っ張られた右腕の方を見ると、青白い手が私の腕を強く握っていたのです。怖すぎると、人って逆に声が出ないんですね。まさのその静かなパニック状態で、私はしばらく暗い部屋の中で腰を抜かしていました。

何度も深呼吸をして、しばらく経ってからやっとの思いで電気をつけました。消灯時間を過ぎていたので、廊下に漏れる光を見た寮母さんが私の部屋をノックして入ってきました。いつもならいきなり雷を落とす剣幕の寮母さんですが、その時の私の顔と様子を見て、何かあったんだと勘付いたのでしょう。優しい声で心配したように聞いてくれて、自分の身に起こった出来事を、震える声で寮母さんに話しました。

思い返すと拍子抜けな感じですが、私の話を聞いても寮母さんはまったく慌てる素振りを見せませんでした。と言うより、何かを悟っているような雰囲気でした。すると寮母さんは「こういう現象、よく起こるのよ。今までに何度も。あなただけじゃないし、私も経験あるからあなたが今言った話もよく理解できるわ」と答えたのでした。

あの手の持ち主が誰なのか定かではありません。ただなんとなくですが、桜の木の下で亡くなった先輩の霊なのかなと感じました。そんな匂いがしたのです。この他にも、ポルターガイスト現象に悩まされたり、白っぽくてフワフワしたワンピースを着た髪の長い女性の目撃談が相次いだり、一定の時刻になると奇妙な声が聞こえてきたり……。今でもその寮は健在で、きっと入居している学生達を悩ましているでしょう。