私の心霊体験談~S高校の日々~

私自身が通っていたS高校での出来事を、全5回に渡ってご紹介いたします。地域や名称はもちろん特定できない範囲での記述としておきます。ただし、知っている人からすれば「あぁ、あそこの高校だな」とすぐに気付くことでしょう。

第4回

夏季合宿中の風呂場

霊能館公開

以前の「第2回 亡くなった顧問のシート」でお話ししたように、私が所属していた部活では夏休みや冬休みに部員全員が学校に泊まり込み、朝早くから夜遅くまで練習するという風習がありました。さてこのS高校、明治時代に設立された歴史ある高校ということもあり、お世辞にも「綺麗な校舎」とは言えません。今回お話しするのは、私が2年生の夏季合宿のときの心霊体験です。

合宿2日目。いつものように夜の練習が終わり、着替えをした人から荷物や布団が置いてある応接室に戻りました。応接室に戻っておしゃべりをしたり、その日の部活ノートを書いたり、お菓子を食べたりと、個々でのんびりと過ごしていました。キャプテンのRが「そろそろ順番にお風呂入ろっか!」とみんなを促し、お風呂に入る順番を決めることになりました。そのときの部員は約30名、学校のお風呂は比較的広く、7~8人くらいは同時に入れるだけのスペースとシャワーが完備されています。お風呂に入る順番を決める方法は、グーチョキパーで同じ手を出した者同士がグループになるというもの。当然、中には生理になっている子もいて、その人達は無条件で同じグループになり、最後にお風呂に入るという暗黙のルールがありました。最初にグーを出したグループが入り、次にチョキのグループ、次はパーのグループという流れで入浴することに決定しました。私はその日、生理だったので1番最後のグループになりました。私以外には後輩のTとNがいて、その日は3人でお風呂に入ることになったのです。

3番目のパーのグループがお風呂から上がり「最後の人、入っていいよー」と言われたので、後輩TとNを連れて一緒にお風呂場に向かいました。後輩にとっては初めての合宿。お風呂の位置や備品の場所などを伝えながら、ワイワイと3人でお風呂に入っていました。夏ということもあって、入浴中の話題は肝試しやお化け屋敷のこと。私が過去に練習場でH先生の霊を見た話や、「この学校では心霊現象がよく起こるんだよ」ということも話しましたが、当然後輩2人はまったく信用しませんでした。「先輩、話を盛りすぎですよ」「でも怖いからもうやめてください」という軽い感じだったと思います。だいぶ時間も遅くなっていたから、「そろそろ上がろうか」と言ってシャワーで軽く身体を流し、隣にある更衣室へ移りました。そのときです、さっきまで私たちがいたお風呂場の方から、冷たい空気が流れてくるのを感じました。示し合わせたかのように3人同時、お風呂場の方をバッと見てタダならぬ雰囲気を感じ取りました。そしてみんなが顔を合わせたその瞬間、お風呂場から「ノンちゃん、ノンちゃん……キャハハハハハ」という笑い声が!!

もうびっくりしすぎて、誰の声かわからないくらいの大声が「ぎゃー!」と更衣室に響き、完全に服を着ていない状態にもかかわらずダッシュで3人共応接室に戻りました。中でも後輩のNの驚き様は尋常ではありませんでした。なぜならNはみんなから「ノンちゃん」と呼ばれていたのです。Nの顔色は真っ青で、ガタガタ震えが止まらずに、部員全員が心配するほどの事態になりました。部員以外で学校に宿泊している人はいなかったし、入浴していた私たち3人以外は応接室にいたので、誰かが私たちを驚かそうとして仕組んだとは考えられません。なにしろ、お風呂場の方から声が聞こえてきたのですから、理屈に合わないのです。

怖い話をしていると霊が寄ってくる、という話を聞いたことがあります。もしかすると、やっぱりそういうところが関係していたのかもしれません。心霊現象がよく起こるS高校。後輩のTとNは、心霊体験デビューをこのとき飾りました。きっと私たち以外の部活動生も、泊まり込んだ日には違った心霊体験をしていることでしょう。Nとは卒業後も何度か会っていますが、その話をするといまだに苦笑いながらも「本当に怖かったんですから、もう言わないでくださいよ」と顔を曇らせます。